デレック・ホーストメイヤー、ジェイソン・ハドラー、ジャンユー・レン
(Derek Horstmeyar, Jason Juddler and Jianyu Ren)
2022年が軒並みほぼすべての資産クラスに厳しい年だったことは周知の事実です。米国株式が20%以上下落する一方で、通常の債券も良かったとはいえず、大半が最低でも10%は下落しています。
言うまでもなく、債券は分散効果を発揮し、ポートフォリオの株式部分が大変な時期には多少のクッションとして機能するものだと思われています。しかし、特に最近はこうした効果を発揮していないことは明らかです。これを念頭に、ポートフォリオマネージャーや投資家が期待しているような効果を、債券という資産クラスが実際にいつ発揮しているのか理解しようとしました。
1970年から遡って、S&P500種株価指数と平均的なトータル・ボンド・ファンドのリターンを調査し、両者の相関が時間とともにどう変わるかを分析しました。また、さまざまな金利環境での相関に加えて、金利が変動する環境についても調査しました。
こうした分析から、いったい何がわかったでしょうか?
フェデラルファンド(FF)金利を変動調査の指標として使用した際、債券と株式の相関が最も高かったのは金利上昇期であることが判明しました。今の環境でもまさしく同じことが起きています。米連邦準備理事会(FRB)がインフレを抑制しようとする中で、債券リターンは株式の損失を抑えるどころか、むしろ程度の差こそあれ、株式と足並みを揃えて下落しているのです。
実のところ、株式と債券の相関は、金利が横ばいの時に最も低下しています。これが、金利変動が少ない時は経済状況が最も安定しているからなのかどうかはわかりません。しかし原因が何であれ、金利が安定しているときが、債券の分散効果が最も高く、株式との相関が最も低下しているようなのです。
金利環境別の株式/債券の相関の平均
金利上昇時 |
0.5257 |
金利安定期 |
0.3452 |
金利低下期 |
0.4523 |
次に、低金利環境(FF金利が3%以下)、中程度の金利環境(FF金利が3~7%)、高金利環境(FF金利が7%以上)のときの株式と債券の相関を調査しました。すると、FF金利が7%を超えていたときが、株式と債券の相関が最も高いことがわかったのです。逆に、低金利環境のときが債券の分散効果が最も高い、すなわち株式との相関が最も低くなりました。
異なるFF金利の環境下での株式と債券の相関
FF金利が7%以上 |
0.5698 |
FF金利が3%~7% |
0.4236 |
FF金利が3%以下 |
0.2954 |
最後に、景気後退期で分散効果がどのように変化するかを調査しました。この調査に当たっては、1970年以降に発生した7回の景気後退開始時の株式と債券の相関を分離して、それから各景気後退終了時の相関を比較しました。
すると7回の景気後退のうち5回で相関が上昇し、1981年と世界金融危機のときが最も相関が急騰していたのです。
このことから何がわかるでしょうか?それは、債券の分散効果が最も必要とされる景気後退のときに、分散効果が最も低いという事実です。
景気後退期における株式と債券の相関
|
景気後退終了時 |
景気後退開始時 |
増減 |
1973年11月~1975年3月 |
0.7930 |
0.7095 |
0.0835 |
1980年1月~1980年7月 |
0.4102 |
0.7569 |
-0.3468 |
1981年7月~1982年11月 |
0.6955 |
0.0282 |
0.6673 |
1990年7月~1991年3月 |
0.7807 |
0.5156 |
0.2651 |
2001年3月~2001年11月 |
-0.1957 |
0.3754 |
-0.5710 |
2007年12月~2009年6月 |
0.8284 |
-0.2149 |
1.0433 |
2020年2月~2020年4月 |
0.7364 |
0.3369 |
0.3995 |
これは、投資家とポートフォリオマネージャーかを問わず大きな問題です。景気後退期や金利上昇期に、債券のヘッジ効果を当てにすることができないのですから。
つまり、弱気相場から資産を守るためには、おそらくコモディティやデリバティブなどの別の資産クラスに分散効果を求める必要があります。もちろんこうした資産でも穴埋めができるとは限りません。
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執筆者
Derek Horstmeyer, Jason Huddler and Jianyu Ren
(翻訳者:中山桂、CFA)
英文オリジナル記事はこちら
https://blogs.cfainstitute.org/investor/2022/11/03/wheres-the-hedge-bonds-and-portfolio-protection/
注) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。
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