627

CFA協会ブログ

No.627

2023年6月23日               

心理指標は、市場にとって大事でしょうか?

Do Sentiment Metrics Matter to the Markets?


デレク・ホルストマイヤーユージュ・パンカーシン・シェイ

 

個人消費は米国の名目GDPのほぼ70%を占めています。そのため、消費者心理は市場のパフォーマンスと何らかの相関関係があるはずです。

確かに、金融ジャーナリストは確かに、何らかの相関関係があるかのようにふるまいます。新たな消費者心理や景況感の数値が発表されるたびに、専門家が姿を見せ、そのデータが市場や経済全体にどのような影響を与えるかを推測します。しかし、これらの指標は市場のパフォーマンスにとって実際にどの程度重要なのでしょうか?

この疑問に答えるため、消費者や企業心理の指標と市場リターンの相関を探ってみました。具体的には、ミシガン大学消費者信頼感指数コンファレンス・ボード米国消費者信頼感指数(CCI景況感指数(BCIの月次データを調査し、いずれも米国のハイ・イールド債、長期債、短期債、総合債券、グロース株、バリュー株、小型株、大型株、国際株に焦点を当て、1970年代に遡って9種類のMSCI株式・債券指数のパフォーマンスとの関係を比較しました。

 全体として、50年以上のサンプル期間を通じて、市場リターンと3つのセンチメント指標との間に有意な相関関係や持続的な相関関係は見られませんでした。最も相関が高かったのは、ミシガン大学消費者センチメント調査と米国小型株との間で、最大でも0.21という弱い相関でした。

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消費者信頼感指数の変化と投資リターンの相関(1970年代~2020年代)

 

  しかし、時間の経過を見ていくと、相関関係にはいくつかの興味深い傾向が見られます。

ミシガン大学消費者センチメント指数の株式リターンとの相関は低下しています。実際、2010年以降は急激に低下し、統計的にはゼロと区別がつかないくらいです。

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ミシガン大学消費者センチメント指数: 過去の市場相関


 

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しかし、CCI2000年代以降、株式リターンと最大の正の相関を示しています。また、2020年以降、株式と債券の相関は平均0.30とかなり有意です。

消費者信頼感指数 (CCI): 過去の市場相関

 

 

BCIも同様の傾向を示しています。BCIは株式リターン指標との間で最も高い正の相関を示直線矢印コネクタ 1し、2010年代から上昇に転じています。

景況感指数(BCI): 過去の市場相関

ミシガン大学消費者センチメント指数よりもCCIBCIの方が市場との相関が高いということは、いくつかの可能性を示唆しています。おそらく、CCIBCIはミシガン指数に比べ、長い年月にわたってその使い勝手の信頼性が高まり、市場がより注目するようになったのでしょう。あるいは、両指数の手法の方が、進化する市場と経済をよりよく反映しているのかもしれません。

もちろん、これらの現象の根本原因が何であれ、これらの相関関係の相対的な弱さを踏まえると、ここでの調査で得られたより大きな収穫として透けて見えてきたことは、金融ジャーナリストやコメンテーター達は、むしろこれらの指標から正当化される以上の意味を導き出そうとしているようだということです。

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執筆者

Derek Horstmeyer, Yuge Pang and Kexin Xu                    

(翻訳者:大濱 匠一、CFA

 

英文オリジナル記事はこちら

https://blogs.cfainstitute.org/investor/2023/05/25/do-sentiment-metrics-matter-to-the-markets/

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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