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CFA協会ブログ

No.637

2023年9月29日               

小型株: 2000年のようなパーティー?
Small Caps: Party Like It’s 2000?

デビッド・バー、CFA

伝説のミュージシャン、プリンスは「1999年のようなパーティーをしよう」と私たちに呼びかけました。しかし今日、小型株投資家である私は、カレンダーを1年後の2000年にすするでしょう。

というのも、20003月までにナスダックは5048でピークをつけ、4月には35近く急落していたからです。その後の1年半も、決して楽しいものではありませんでした。ペッツ・ドット・コムやプライスラインなど、かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだったハイテク株の多くが、その価値のすべて、あるいはほとんどすべてを失いました。インテル、シスコ、オラクルといった名だたるハイテク株でさえ、大きな下落を経験しました。実際、ドットコム・バブルとして知られるようになったこの悪名高い時期に、何兆ドルもの資金が蒸発しました。

しかし、一部の投資家にとっては、ドットコム・バブル直後は資本を投下するのに最適な時期のひとつでした。市場がまったく見向きもしなかった優良企業の重要なポジションを獲得する、あまりにも稀な機会だったのです。

今日、優良小型株は同じようなポジションにあると思います。

昨今、小型株は愛されず、望まれず、パーティーに招かれることもありません。そして、一握りのメガハイテク株、特に人工知能(AI)関連の先導役として認識されている銘柄が主催する大規模なパーティーが開催されています。

AIマニアとドットコム時代の類似性は無視できません。1999年当時、インターネットを売り物にする企業は市場のお気に入りでした。ネタバレ:良い結末は迎えられませんでした。とはいえ、選別的な銘柄選びには絶好の時代であり、今日のカナダの小型テクノロジー株にもよく似た現象が見られます。

 

今、何が起きているのか - なぜ大きなディスカウントが起きているのか?

 

人生においても、投資においても、すべての出来事には理由があります。そしてそれは、小型株の絶対的・相対的な低バリュエーションにも当てはまります。

 

1. 大資本のプライベート化が進んでいる。

 

年金基金やその他の大規模な機関投資家は、アルファを生み出そうとしています。かつては、それを達成するために投資の一部を小型株公開企業に割り当てていました。今日、こうした投資家は、ポートフォリオを公開企業から非公開市場へとシフトさせています。ほんの一握りの銘柄が利益の大部分を牽引している場合、資産運用会社はアウトパフォームを達成するのが難しくなります。したがって、プライベート・エクイティの分散効果とアルファの可能性は魅力的に映ります。例えば、エール大学の基金では、プライベート・エクイティとベンチャー・キャピタル・ファンドに40近く投資していますが、1990年にはわずか5でした。小型株への需要が減少すれば、バリュエーションも低下します。

 

2. 投資家はパフォーマンスを追い求めている。

 

最近の株式リターンを牽引してきたメガハイテク株、マグニフィセント・セブンの名前は誰もが耳にしたことがあるでしょう。エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン、アップル、アルファベット、テスラ、メタなどです。物事を整理すると、アップルはラッセル2000に含まれるすべての米国中小企業よりも価値があります投資家は大型株のリターンを追い求めており、ナスダックの5年間の実績は素晴らしいものでした。20001月当時もそうでした。

 

3. マクロとミクロがある。

 

マクロ・レベルでは、小型株市場は2021年に転換し、ほぼ2年半にわたって逆風に直面してきました。金利上昇は小型株のバリュエーションに織り込まれており、大企業とは異なる負債ダイナミクスを持つ中小企業は一般的に、潜在的な景気後退を前にして最初に売られます。中小企業、特に成長の初期段階にある企業は、より多くの負債を抱える傾向があり、その負債の平均償還期間は8.2年に対し5.7年と短い傾向があるために、金融引き締め環境ではより大きなリスクにさらされます。また、中小企業は頼れる資金源も限られます。

 

市場が上昇するために必要な起爆剤は何か?

 

こうした背景の中、小型株のチャンスはどこにあるのでしょうか。中小企業は景気回復の先陣を切る傾向があります。金融政策がハト派寄りになれば、おそらく2024年第1四半期にも、小型株は力強く反応するはずです。パフォーマンスの主導権が狭まるにつれ、機関投資家をはじめとするファンドが他の銘柄に目を向け始めるでしょう。

小型株は流動性が低い傾向があるため、需要が急増すれば株価が大きく上昇し、再評価が進む可能性があります。平均回帰の法則に従えば、小型株のバリュエーションはある時点で長期的な平均値に戻ります。

M&A市場もまた、小型株の潜在的上昇要因のひとつです。今日、売り手を見つけるのは難しくなっています。多くの優良企業が高いバリュエーションで市場に投入され、経営陣は心理的にその高いバリュエーションで引き留められています。しかし、やがて株主や取締役会は新たな現実を受け入れ、買収が継続的成長への最善の道であることに気づくでしょう。

小型株プレミアムは、長期的には小型株が大型株を上回ることを意味します。例えば、テレコム・ブームとその終焉の後の2000年から2005年まで、S&P600S&P500を年平均12アウトパフォームしました。現在は、大型株に比べて小型株の倍率が圧縮されている時期です。

20239月現在、S&P 600のフォワードPER13.8です。過去2回、S&P 600の予想PERがこのレンジにあったのは、世界金融危機(GFC)と世界的大流行が始まった時です。いずれも小型株に資金を投下した投資家が報われました。今日も同じような機会があるかもしれません。

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執筆者

David Barr, CFA

(翻訳者:猪原 英治、CFACIPM

 

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) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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