621

CFA協会ブログ

No.621

2023年5月12日               

米国の10人の偉大な投資家と、その特質とは

The 10 Greatest US Investors and the Virtues That Made Them

マーク・J・ヒギンズ、CFACFP

 

人間の試みにおいて、金融の世界ほど、歴史が大切にされない分野はないでしょう。過去の経験は、それが単なる記憶の一部である限りにおいて、現在の驚くべき驚異を理解する洞察力を持たない人々の原始的な避難所として無視されてしまうのです。" - ジョン・ケネス・ガルブレイス

 

史上最も偉大な投資家は誰なのでしょうか?

 

オフィル・アセットマネジメント創設者のアンドリュー・ミッチェル氏は最近人工知能サービスのチャットGPTに十大投資家を挙げるように尋ねました。AIは下記のリストを返し、ミッチェル氏はそれをリンクトインにポストしました。このリストは活発な議論を巻き起こしました。

 

チャットGPTによる偉大な投資家リスト

1

ウォーレン・バフェット (Warren Buffett)

2

ピーター・リンチ Peter Lynch

3

ベンジャミン・グレアム Benjamin Graham

4

ジョージ・ソロス George Soros

5

レイ・ダリオ Ray Dalio

6

ジム・モンズ Jim Simons

7

フィリップ・フィッシャー Philip Fisher

8

ジョン・ポールソン John Paulson

9

チャーリー・マンガCharlie Munger

10

ジェシー・リバモア Jesse Livermore

 

 

私はこの質問とチャットGPTの回答の両方に興味を持ちました。ちょうど『米国金融史への投資』の原稿を書き上げたばかりで、多くの伝説的な投資家のことが頭にあったからです。チャットGPTのリストは的外れというものではありませんでしたが、ふさわしくないと私が思う4人が含まれており、また、はるかにその名に値する数人が除外されていました。

 

チャットGPTはどこで間違えたのでしょうか?

 

私の考えでは、4つの問題がありました。第一に20世紀と21世紀のトラックレコードのある米国人男性だけを含んでいることで、チャットGPTのリストには3つのバイアスすなわち国籍、性別、時代性の偏りがあることです。また、選別基準も説明されていません。確かにミッチェル氏が根拠まで尋ねなかったことは割り引いてやる必要がありますが、それでも透明性が欠けていることは問題です。

 

標準的な基準がなかったということから、私は、歴代の優れた投資家を区別する基本的な要素について考えてみました。私の考えでは、第一の基準は、その人の投資実績の長さです。証券市場の非情かつ恒常的な効率性上昇を考えると、長期にわたって継続的な成功を収めている投資家だけが考慮されるべきです。さらに、そのアウトパフォーマンスが運ではなく実力であったことを確かなものとするために、異なる市場環境でも優れた成績を残していることが必要です。数回の大儲けに依存した実績だけでは、その資格はありません。

 

この最初のふるいでは、ジェシー・リバモア、ジョン・ポールソン、ピーター・リンチが失格となります。リバモアのキャリアは1929年の大暴落をきっかけとした破産で終わりました。ポールソンは世界金融危機(GFC)で何十億ドルも稼ぎましたが、その後の成績はまちまちでした。リンチの全盛期はわずか13年ほどで、彼の戦略は当時支配的であった市場原理の強い追い風に恵まれたものです。最後に、フィリップ・フィッシャーは除外せざるを得ませんでした。フィッシャーの手法に関する私の知識は限られていますが、彼の名前はこのリストの中で最も説得力がなく、J.ピエポン・モルガンを入れる余地を空ける必要があったからです。

 

時代を超える投資の極意

では、チャットGPTが特定した残りの人たちは、なぜそのポジションを獲得したのでしょうか?そして、モルガンを加えた後、まだ空いている3つの枠は誰が占めるべきなのでしょうか?

 

私は、「優れた投資とは、4つの重要な前提に基づくものである」という仮定に基づいて人選を行いました。第一に、投資家が市場や競合他社に対して持続的なアウトパフォームを達成する唯一の方法は、他の誰にもほとんど知られていない重要な事実を発見する独自の能力を持っているかどうかということです。第二に、そのような投資家がひとたびこれらの事実に基づいて行動しても、利益を実現するまで、流れから外れたポジションを長期間保持しなければならないことがしばしばあるということです。第三に、市場が進化していく中でも、競争優位性を維持する必要があります。最後に、偉大な投資家の中で最も稀な才能は、遺すべきレガシー(遺産)を生み出し、その才能を次の世代に引き継ぐことです。

 

米国史上最高の投資家たちは皆、最初の3つの条件を満たしていますが、4つ目を達成したのはごく一部の人たちだけです。

 

以下は、チャットGPTのランキングを私が修正したものです。各投資家の選定理由の簡単な要約には、その投資家が際立っていた特質も添えています。重要な注意点は、チャットGPTによる選別に対する私の修正案も、いくつか同じ欠点を持っていることです。つまり、米国中心で、圧倒的に男性が多いということです。そのため、このリストは「米国史上」で最高の投資家のリストと言った方がよいでしょう。とはいえ、このリストは、なぜ本当に優れた投資家が稀有な存在であるかを説明しています。

 

1.  隠された真実を発見する

群衆の知恵は、投資において最も過小評価されている原則です。なぜ証券市場がこれほどまでに容赦ないのか、なぜほとんどすべての投資家が伝統的な資産クラスを堅持し、ポートフォリオの大部分を指数に連動させるべきなのかを、それは説明しています。しかし、一部の投資家は、他の投資家のほとんどすべてが見落としている真実を発見することによって、市場のインデックスや競合他社を凌駕する結果を出すことがあります。そのための努力において助けとなるのは、懐疑心、継続力、創造性といった特質になります。

 

チャーリー・マンガー: 懐疑心

"Invert(反転)"、常に "Invert(反転)"せよ: 状況や問題をひっくり返してみなさい。逆から見るのです。" - チャーリー・マンガー

 

価値ある未知の事実を発見することは、従来の考え方に疑問を持つことで初めて可能になります。チャーリー・マンガーは、「逆転の発想」を駆使することで、この性質を芸術の域にまで高めています。1986613日、ロサンゼルスのハーバード・スクールで行われた卒業式でのスピーチが、それを証明しています。マンガーは、卒業生に成功する方法をアドバイスするのではなく、物事を逆さまにして、悲惨な人生を送りたければ、どのような悪癖を抱くべきかを論じました。人間関係において信頼されないこと、他人の失敗から学ばないこと、逆境に直面しても常にあきらめることを彼は提案しました。彼は、卒業生に「何をすべきか」ではなく、「何をすべきでないか」を教えたのです。

 

マンガーは、投資評価にも同じ逆転の発想の手法を用いており、自らの最高の決断の多くが、型にはまらない視点で問題を検討する姿勢にあったとしています。

 

推薦図書プア・チャーリーズ・アルマナック』、  チャーリー・マンガー著

 

 

レイ・ダリオ: 継続力

"あなたにはまだ見つけられていないだけで、良い道がいつもあるものです。 ですから、見えている選択肢で妥協せずに、見つけるまでそれを探すことです。" - レイ・ダリオ

 

ブリッジウォーター・アソシエイツの元CIOであるレイ・ダリオは、約30年にわたって一貫したアウトパフォームを実現しました。リスクと手数料を調整すれば、その偉業はさらに素晴らしいものです。ダリオの功績の核心は、執拗で、しばしば痛みを伴う真実の追求にありました。

 

このため、ブリッジウォーターの投資チームは、経済、市場、そして自分自身について、居心地は悪くても重要な現実を直視することを余儀なくされました。ダリオのベストセラー『人生と仕事の原則』では、ブリッジウォーターの根気強い調査によって、同社がいかに希少なミスプライスの機会や市場の混乱を特定し、利用することができたかが語られています。現実を発見することへのこれほどのコミットメントは、希少であると同時に不可欠なものです。なぜなら多くの投資家は、現実よりも自分が真実であってほしいと思うことを信じようとするからです。

 

推薦図書:『人生と仕事の原則(邦訳題)』、レイ・ダリオ著

 

 

ジム・シモンズ: 創造性

"惑星がなぜ太陽の周りを回るのか、私にはわかりません.だからといって、それを予測することができないわけではありません。" - ジム・モンズ

 

ルネッサンス・テクノロジーズの創業者であるジム・シモンズは、証券市場間のつながりに潜む小さな市場の非効率性を丹念に探し出し、そこから利益を得るための戦略を考案してきました。彼のチームは、しばしば彼らでさえ原因が理解できないこれらの非効率性を特定し、利用するための複雑な技術的インフラを構築してきました。

 

ルネッサンスは、このように投資機会を限定しているのにも関わらず、最終的には、投資しきれないほどの資本を蓄積しました。同社の旗艦ファンドであるメダリオンファンドは現在、その大部分が内部資金で構成されており、投資ファンドというよりも資金を生み出す造幣局のごとく機能しています。2018年現在で、メダリオンは30年間で手数料控除後年率39.1%という驚異的なリターンをあげていました。投資家にとってルネッサンスのパフォーマンスを再現するのは夢見ることさえ難しいでしょうが、それゆえにこそシモンズは投資における創造性の規範なのです。

 

推薦図書:『最も賢い億万長者 数学者シモンズはいかにしてマーケットを解読したか(邦訳題)』 グレゴリー・ザッカーマン

 

 

2.  確信

1928 年、メリルリンチの創業者であるチャールズ・E・メリルは、米国株の評価がもはや現実を反映していないと判断しました。そして、1929年のピークを迎えるほぼ1年前に市場から撤退するよう、パートナーや顧客に呼びかけました。彼は執拗な嘲笑に耐え、自分自身の正気を疑うようになり、精神科の治療を受けるまでになりました。しかし、彼は正しかったのです。

 

偉大な投資家にとっての挑戦は、その定義上、多くの人が間違っている、あるいは愚かだと考えるような、人気のない立場を取らなければならないということです。以下のいくつかの特質は、そうした投資家が、ポジションを放棄せよという絶え間ない圧力にもかかわらず、それを維持するのを助けるものです。

 

 

ウォーレン・バフェット: 忍耐力

"株式市場は短気な人から忍耐強い者へと資金を移転する装置です。" - ウォーレン・バフェット

 

成功する投資とは、スロットマシンでジャックポットを当てるというよりも、描いた絵の具が乾くのを見守るようなものであることの方が多いものです。長きにわたってアウトパフォームしている人は、自らが発見した真実を市場が認めるのには時間がかかることを理解しています。その間に新しい流行が生まれては消え、バブルが膨張しては破裂します。割安な資産は何十年も割安なまま推移するかもしれず、一方で割高な資産は崩壊前には一段と高くなることがしばしばです。ウォーレン・バフェットは常に忍耐の重要性を認めてきました。彼は市場の日次はもちろん年次のノイズさえほとんど気にすることなく、自らの投資が複利効果を発揮するのを冷静に待つのです。

 

推薦図書:『バフェットからの手紙(邦訳題)』 ローレンス・A・カニンガム、ウォーレン・バフェット著

 

 

ヘンリエッタ・"ヘティ"・グリーン: 倹約

"私は4セントの葉巻を吸っており、それが気に入っています。しかし、もっといい葉巻を吸うようになったら、今は十分満足している安い葉巻に、我慢できなくなるかもしれません" - エドワード・ロビンソン(ヘティ・グリーンの父)

 

ヘティ・グリーンは、アメリカ史上最も過小評価され、誤解されている投資家かもしれません。倹約伝説は彼女の多くの特質の一つでしたが、それが彼女の成功にどのように貢献したかを理解する人はほとんどいません。彼女は人生の大半をニューヨークのブルックリンとニュージャージーのホーボーケンにある下宿屋の質素な借り家住まいで過ごし、ケミカルバンクに間借りした事務所には誰でも座れるロールトップデスク一つ切りでした。このような質素さが、同時代の多くの人々を破滅に追いやったウォール街の度重なるパニックを乗り越える支えとなったのです。優れた投資家は、倹約の価値を高く評価するものです。倹約は、金融不安の折にもポジションを維持し、資本が不足している時に例外的な機会から利益を得るのに役立つからです。

 

推薦図書:『ヘティ・グリーンの物語:アメリカ最初のバリュー投資家で金融グランドマスター』 マーク・J・ヒギンス著

 

 

ジョージ・ソロス:反発力

"私の実用的なスキルを総括するならば、「サバイバル」の一言に尽きるでしょう" - ジョージ・ソロス

 

ジョージ・ソロスは、1990年代初頭、イングランド銀行が英ポンドの価値を維持するための外貨準備高を欠いていることに賭けて、投資の殿堂入りを果たしました。この賭けは危険なもので、手痛い損失を被る可能性がありました。

 

このリストの投資家の多くは、このようなギャンブルを避けていますが、そうしたギャンブルを機会とする投資家は、逆境を跳ね返す力の強さを試されます。理にかなった投資でも初期に損失が出ることは多く、不屈の精神に欠ける投資家は早々にポジションを解消しがちです。ソロスは、為替市場への襲撃にあたって、逆境を耐え忍び、適応して跳ねのける力の強さを何度も試されましたが、理にかなった投資を放棄することを拒んだことが報われて、利益を得たのです。

 

推薦図書 ヴァンダルの王冠-国際金融帝国の敗退(邦訳題)』 グレゴリー・J・ミルマン著

 

 

3.  競争優位の維持

投資業界の皮肉は、投資家が自分の才能をひけらかせばするほど、そんなものなど持っていない可能性が高いということです。なぜでしょうか?それは競争優位が事実であっても、秘密でなくなった時点で失ってしまうことが多いからです。いったん発見されると、市場がそれを裁定して存在を消してしまうのです。そのため、用心深さが重要な属性となります。

 

また、この章題の下で論じるのは奇妙に思えるかもしれませんが、博愛心と誠実さも重要な属性です。というのは、最高の投資家でさえ、時に失敗することがあるためです。倫理観や社会の幸福に関心が薄い人は、自分を救うことができる人たちから救いの手を差し伸べられることもあまりないでしょう。そのため、これらは必要な資質なのです。

 

 

ジェイ・グールド: 用心深さ

"自分が何をしようとしているのか、それが終わるまで誰にも話してはなりません。" - コーネリアス・"コモドア"・ヴァンダービルトの言葉

 

ジェイ・グールドの非凡な才能を帳消しにしたのは、倫理的な欠点でした。1800年代後半、株取引業者や会社経営者の行動を規定する法律はほとんどなく、グールドは規制の空白に付け込み、存在していたわずかな規制もさまざまな抜け道を使って回避しました。ウォール街で最も印象的ないわゆる金ぴか時代の征服の多くを、不正かつ不謹慎な手段で指揮したのが彼でした。

 

しかし、ウォール街において自画自賛が当然の時代にあって、グールドは広く知れ渡るほど用心深い性格でした。彼の策略にはまった人々の多くは、自分がターゲットとされていることも、ましてやグールドが糸を引いていることにも全く気づきませんでした。彼は考えを自分だけにとどめたため、今でも謎の多い人物です。

 

推薦図書:『ジェイ・グールドのビジネス・キャリア』 ジュリアス・グロディンスキー著

 

 

J・ピアポント・モルガン:誠実さ

"第一に人格です。お金や他の何ものよりもそれが先です。お金では買えません。キリスト教圏のすべての債券と引き換えであっても、信用していない男に私がお金を融通することはありません。" - J・ピアポント・モルガン

 

金ぴか時代、ウォール街の取引量は急増しましたが、規制がほとんどなかったため、グールドらは悪質な行為で利益を得ることができました。株の運用者は、手の込んだ市場操作のスキームやインサイダー取引によって、投資家を日常的に虐げていました。しかし、J・ピアポント・モルガンは、1890年代にウォール街の事実上のリーダーとして頭角を現すと、こうした最悪の阻害行為の多くを抑止しました。

 

モルガンには欠点もありましたが、絶望的な状況の中で、一貫して自分の利益よりも顧客と国の利益を優先しました。彼の誠実さはビジネスに利益をもたらし、モルガンの名前への信頼は投資家、金融家としての競争優位を支えるものとなりました。J・ピアポント・モルガンをこのリストに含めることには、しばしば異論もあるでしょう。しかし、モルガンが登場する前の証券市場の無法地帯ぶりを考えると、彼の誠実さは際立っています。

 

推薦図書:『ザ・パニック 1907年金融恐慌の真相(邦訳題)』 ロバート・F・ブルーナー、ショーン・D・カー著

 

 

ベンジャミン・グレアム: 博愛心

(世界恐慌の間)私の心の重荷は、自分の財産が縮小することよりも、消耗が長期に渡ることでした・・・・・・多くの親類や友人の財産に責任を負っているという自覚もそれに輪をかけました。 - ベンジャミン・グレアム

 

バリュー投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムは、自らの手法を2冊の古典的名著『証券分析』と『賢明なる投資家』で説明しています。グレアムの投資実績は並外れたものでしたが、強い倫理観はさらに彼を際立たせるものでした。1930年代初頭、グレアムが初めて手がけた投資ファンドが破綻しそうになりましたが、彼が最も懸念したのは、それが投資家らの人生にどのような影響するかでした。そこで、グレアムは投資家らが依存していた配当の支払いを維持するために自己資金を投入しました。その結果培われた信用によって、金融業界に吹き荒れた嵐をやり過ごし、さらに不況が収束したときに挽回して大きく成功する支えとなったのです。

 

顧客の利益を自らのそれより優先することは、困難な時代にはたやすく放棄される規律であり、また、どんなに優れた投資家でも、いずれは苦難を経験するものです。グレアムが自らの信念を曲げなかったことで示されるのは、そのような資質が倫理的な美徳であると同時に、戦略的な資産でもあるということです。

 

推薦図書:『ウォール街学長の回想録』 ベンジャミン・グレアム著、シーモア・チャットマン編

 

 

4.  成功を永続させるために

米国は第二次世界大戦後、世界の金供給量の3分の2を吸収し、産業インフラを温存していた唯一の国として台頭しました。その後数十年にわたり、金融機関はこの優位性を利用して大きな富を築き、その受託者は資本のアロケーターとして影響力をふるうようになりました。このことは、投資家にとって全く新しい挑戦をもたらします。年金基金、基金、財団は永続的に存続することが期待され、その競争優位性を創設者らの寿命を超えて維持することが求められたのです。米国史上10大投資家の最後の一人は、これを極めた人物です。デビッド・スウェンセンの成功は、代替資産クラスに精通した投資によるものだと良く言われます。しかし、彼を真に際立たせているのは、教師と指導者としての才能でした。

 

デビッド・スウェンセン:指導力

真の秘密は、デビッドによる投資基金ポートフォリオの概念的な枠組みにとどまらず、極めつけは、彼の人に対する並外れた投資であると実感しています。イェール・モデルの成功には、高い知性と献身、そして無私の精神を持ったチームプレーヤーが必要です。デビッドの人への投資、それこそが隠し味なのです!" – ディーン・タカハシ

 

イェール大学基金は、機関投資家による投資規範を代表するものです。1987年から2021年まで、基金メディアンの年率8.2%に対して、年率約13%のリターンを記録しています。スウェンセンが『ポートフォリオ・マネジメントの先駆者』を著して以来、機関投資家は彼のパフォーマンスを再現しようと努めてきましたが、それに迫るものはほとんどありません。なぜでしょうか?ひとつには、イェール大学の競争優位性の源泉を理解している人が少ないからです。ベンチャーキャピタル、バイアウトファンド、ヘッジファンド、その他の代替資産に投資することがすべてだと思い込んでいるのです。

 

こうした見解は、過度に単純化され、不正確です。優れた投資家を鍛え、鼓舞出来るスウェンセンの能力こそが本当の差別化要因でした。2022410日、イェール大学ではスウェンセンのレガシー(遺産)を称える追悼式が行われ、彼の同僚であったディーン・タカハシが、少なくとも10年以上の実績を持つイェール大学基金出身CIO8人のパフォーマンス記録を見直しました。その結果、8人全員が他の基金と比較して10分位トップにランクインしました。無作為抽出の場合、このような事象が起こる確率は1億分の1です。30年間にわたって卓越した投資を実現するのは稀なことですが、その技術を後の世代に伝えることで成功を永続させることは、あらゆる才能の中で最も稀有なことであり、これが米国投資家の殿堂の中で特別な地位をスウェンセンにもたらしています。

 

推薦図書:『イェール大学基金レポート2020

 

 

修正版 米国の名投資家リスト

では、米国史上最も偉大な投資家は誰で、どのようにランク付けされるべきなのだろうかという疑問が残ります。その答えはある程度主観によりますが、名前そのものよりも、彼らを偉大にした時代を超えた資質が重要なのです。

 

もし、私が絶対的なベストを選ぶとしたら、ヘティ・グリーンを選びます。彼女は10個の特質すべてを示しただけでなく、いくつかのカテゴリーでトップに立ち、状況の不利な時代において成功を収めたのです。このリストの何人かのライバルがまだ致命的なミスを犯す時間がある中で、彼女の卓越した実績はまた完全なままです。

 

トップのグリーンと10位のグールド以外の的確な順位については、それほど確信はありませんが、このテーブルは米国史上もっとも偉大な投資家についての私のランキングです。

 

私の偉大な投資家リスト

1

ヘティ・グリーン (Hetty Green):倹約

2

ウォーレン・バフェット (Warren Buffett):忍耐力

3

チャーリー・ムンガー(Charlie Munger):懐疑心

4

ジム・モンズ(Jim Simons):創造性

5

デビッド・スウェンセン(David Swensen):指導力

6

ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham):博愛心

7

ジョージ・ソロス(George Soros):反発力

8

J・ピアポント・モルガン(J. Pierpont Morgan):誠実さ

9

レイ・ダリオ(Ray Dalio):継続力

10

ジェイ・グールド(Jay Gould):用心深さ

 

 

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翻訳者清水 英佑CFA

 

英文オリジナル記事はこちら

https://blogs.cfainstitute.org/investor/2023/05/03/the-10-greatest-us-investors-and-the-virtues-that-made-them/

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

また、必ずしもCFA協会または執筆者の雇用者の見方を反映しているわけではありません。