648

CFA協会ブログ

No.648

2023年12月15日               

「クリプト(暗号資産)」ではなく、ブロックチェーンの話をしよう
Let’s Talk Blockchain, Not “Crypto”


アンドリュー・アルメイダ、CFA

 

背景

一般の人々にとって、「クリプト(暗号資産)」という言葉にはいろいろな意味が含まれています。非代替性トークン(NFTs)から、レイヤー0、レイヤー1、レイヤー2、ステーキング・プロトコル、許可制ブロックチェーン、パブリック・チェーン、ウェブ2.5、ウェブ3.0、そしてそれ以上のものまで、すべてを包括しています。「暗号資産」に投資しているのかと聞かれるたびに、私はぞっとします。この言葉は使い古され、広範に適用されすぎて、意味をなさなくなっているからです。

しかし、機関投資家の投資分野では、暗号資産とはほとんどビットコインのことです。それが最も注目されている点です。2009年にビットコインが誕生して以来、伝統的金融(TradFi)はビットコインが何であるか、何になるのか、そして投資資産として有効かどうかを理解するのに苦労してきました。他の多くの人々と同様、私も疑念を抱いていました。

この同じ時期に、TradFiは上場投資信託(ETF)を全面的に採用しました。これにより、一般的なインデックスの枠組みがさらに強化されました。 時価総額の大きいものから始めて、徐々にその下に進んでいくアプローチです。その結果、業界は期待に胸を膨らませながら、ビットコインに関連する動きへの手がかりを待ち続けています。

機関投資家の資金は、おそらく2つの重要な条件が満たされるまで傍観することになるでしょう。SECがビットコインETFを承認すること、そしてSEC、商品先物取引委員会(CFTC)、あるいはそれらの組み合わせなど、どの規制機関がさまざまなトークン資産を監督するのかについて明確な指針を得ることです。

しかしこのアプローチは、ブロックチェーンの基本的な意義と、それが意味する機会を見落としています。投資の専門家として、私たちはビットコインを超えてブロックチェーンの領域を深く掘り下げる必要があります。

ブロックチェーン技術の最も価値ある応用は、トークンやコインを通じてではなく、2つの異なるコンセプトにかかっています。ブロックチェーンそのもの、つまり単一の真実のソースを提供する役割を担う台帳と、いわゆるコンセンサス・プロトコル、つまりその真実がどのように合意されるかということです。

アプリチェーン(Appchains

この2つのコンセプトが、ブロックチェーンを活用したアプリケーションを支えています。このフレームワークには深い意味があります。すべての参加者からの入力が検証されるため、信頼性が高くなり、すべてのアプリユーザーがブロックチェーン上のデータを信頼することになります。アプリケーションのセキュリティと継続的な運用は、1つの中央機関やそのサーバーに依存しません。代わりに、コンセンサス・プロトコルに導かれた参加者の強固なコミュニティと独立したサーバーのネットワークが、その継続的な安全性と実行可能性を保証します。検証を欠くデータは台帳に記録されません。

これはアプリケーション共有に革命をもたらす可能性があります。TradFiでは、中央当局が情報を検証しなければなりません。しかし、分散型金融(DeFi)では、ユーザー自身がコミュニティとして検証プロセスを行います。彼らはデータを検証するコミュニティの一員であるため、データを信頼するのです。

デジタルトランスフォーメーションは、ペーパーワークを削減または排除し、大幅な生産性向上をもたらしました。しかし、リコンサイル(照合)がなくなれば、飛躍的な進歩を遂げ、信頼と生産性の両方において指数関数的な成長がもたらされるでしょう。

カストディ(保管)

カストディの問題は、TradFiDeFiを区別する主な要因です。ブロックチェーン上の資産はどこにあるのでしょうか。銀行が私たちのお金を1つの専用の場所に保管しないように、ブロックチェーン上では、プロトコルが正当で適切に分散化されている限り、コミュニティが私たちの口座、情報、データ、残高を検証しています。

私たちがTradFiに投資する際には、取引する各機関でKYCKnow Your Customer)手続きを行う必要があります。私たちはウォレットからIDを取り出し、情報を入力し、送金します。しかし、もし私たちのウォレットがブロックチェーン上のアドレスであり、認証証明書が含まれていたらどうでしょうか。口座を開設するたびにこのようなKYC手続きを行う代わりに、私たちのデータがすでに認証されていることを確認するアプリケーションにアドレスをリンクさせるだけでいいことになります。概念的には、準「FINRA」チェーンに似ています。 KYCを一度完了すれば、投資顧問会社をシームレスに切り替えることができます。

このような認証により、セキュリティとスピードの両方が向上します。ブロックチェーンが商品の品質を認証するサプライチェーンを想像してみて下さい。私たちはこの認証された品質を、コミュニティの一員としてアプリケーション・チェーンに参加し、検証する企業全体で信頼することができます。この信頼によって、材料はサプライチェーンに沿って迅速に移動することができ、その品質に対する信頼が高まります。

ブロックチェーンに弱点はない

どのような技術革新でもそうであるように、暗号資産にも悪徳業者や詐欺が存在します。しかし、有効なブロックチェーンは企業の業務拡大やコスト削減に役立っており、より安全で信頼できるテクノロジーの基盤として機能します。ブロックチェーンはこれからも存在し続けます。

実際、人工知能(AI)をめぐる誇大宣伝が続く中、AIシステムの学習方法、学習対象、生成される出力に関する懸念はいたるところで見受けられます。しかし、ブロックチェーンはこうした懸念のいくつかに対処することができます。AIはしばしば「Garbage In,Garbage Out」問題に悩まされます。すなわち、AI のパフォーマンスは入力データの品質に依存するということです。ブロックチェーンは、その検証とコンセンサス機能によって、AIにゴミが入り込むのを防ぐことができます。

暗号資産全般、特にビットコインにまつわる誇大宣伝はすべて無視して下さい。ブロックチェーンこそ、投資家が語るべき本当のチャンスなのです。

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執筆者

Mark Fortune

(翻訳者:猪原 英治、CFACIPM

 

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Let’s Talk Blockchain, Not “Crypto” | CFA Institute Enterprising Investor

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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