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CFA協会ブログ

         

No.678

2024年8月9日               

マーケットはボラティリティをどれほど正確に予測できるのか?
How Well Does the Market Predict Volatility?

デレク・ホーストメイヤー

アレックス・ハンドリー

アナ・クラウディア・F・マニュエル

 

シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数 (VIX) は、投資家が将来のマーケットに対して予測するリスクを測定する手段として、1990 年代に生み出されました。CBOEVIXは、S&P500指数の30日オプションを使用して、トレーダーのボラティリティに対する予測を測定するという特徴があります。本質的には、マーケットが予想する株式のボラティリティの先行きについて、将来的な予測値を提供します。

 

しかし、この指標は実際の数値に対してどの程度正確で、いつマーケットから乖離するのでしょうか?私たちは1990年まで遡り、VIX の全データをS&P 500指数の実現ボラティリティと比較することで、この問題に取り組みました。マーケットはボラティリティを、平均して4ポイントほど大きく捉えていることが分かりました。しかし、マーケットによる予測が大きく間違っていた、特別な時期もありました。これらの点を下記の図で示します。

 

1は、全期間の時系列データの画像です。平均すると、VIXは一貫して実現ボラティリティを上回っていることが分かります。またスプレッドも、スパイク期間(市場が混乱している期間)を除いて、一貫していました。

 

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2は、データを要約したものです。S&P500指数の30日後を基準とした実現ボラティリティの35年間の平均は15.50%でした。同じ期間で、VIX30日先の予想)の平均は19.59%でした。2つの指標の間には4.09%の差があります。これは、ヘッジしたいと考える予測ボラティリティに対して、平均で4.09ポイントの保険料がかかることを意味します。

 

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次に、大きな危機が発生しなかった時期、つまり1990年から1996年について見てみます。図3は、こうした平常時にマーケットがどのように機能したかを示しています。VIX は一貫して、実現ボラティリティを5 から7ポイントほど上回っています。

 

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4は、全く異なる期間です。つまり、2008年の世界金融危機 (GFC) を描いており、全く違っていたことが分かります。20087月に、30日先を参照した実現ボラティリティが VIX を超えて急上昇し始めました。こうした状況は、200811月に VIX が最終的に実現ボラティリティに追いつき、そして一致するまで続きました。しかしその後、実現ボラティリティは再び低下する一方、VIX は上昇を続け、2009 年初頭には実現ボラティリティを上回りました。

 

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これはパニック時の典型的なパターンのようです。VIXは、差し迫るボラティリティに対して反応が遅い一方、発生しているボラティリティをいったん認識すると過剰反応します。これは、私たちのマーケットについてのあることを物語っています。連邦準備制度理事会やその他の機関は、将来のリスクが非常に高いと判断すると、VIX を抑えるために介入し、実現ボラティリティを低下させるのです。図5では、コロナ期間中にこうした動向が再確認できます。

 

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これらの図からは、2つの興味深いことがわかります。第一に、投資家はボラティリティをヘッジするために、平均4%のプレミアム(つまり、VIXと実現ボラティリティの差)を支払っているということです。第二に、市場がこのプレミアムを維持しつつも、GFCやコロナのような大規模かつ予期せぬ出来事に対して当初は反応が遅く、その後に過剰反応してしまうことです。

 

壊滅的な出来事をヘッジするためにVIX先物やその他のデリバティブを使用している人々にとって、これらの結果は、テールリスクへのヘッジに支払うことが想定されるプレミアムの大きさや、市場がパニックの時に過剰に支払ってしまうリスクがあることを浮き彫りにしているのです。

 

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執筆者

Derek Horstmeyer

Alex Handley

Ana Claudia F. Manuel

(翻訳者:安部 智宏, CFA

 

英文オリジナル記事はこちら

How Well Does the Market Predict Volatility? | CFA Institute Enterprising Investor

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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