マーク・フォーチュン
今年5月、コートジボワールのアビジャンで開催されたアフリカ開発銀行(AfDB)の年次総会において、代表者たちが経済の未来について議論するなか、新たなコンセンサスが生まれました。それは、アフリカの次なる成長の波は、援助ではなく資本市場によってもたらされるというものです。
会議で発表されたCFA Institute Research & Policy Centerの新しい研究では、サハラ砂漠以南のアフリカの構造的な投資ニーズを支援するため、プライベート・キャピタルを活用する必要性を調査しています。この研究では、資本市場の発展に対する既存の障壁を特定し、分析しています。そして、この地域で活動する規制当局や政策担当者、投資業界、国際機関に対して提言をしています。
このレポートの各国レベルの寄稿者の多くはCFA協会認定証券アナリストであり、現地の深い専門知識がレポートの洞察へ活かされています。CFA協会のEMEAアドボカシー責任者であるオリビエ・ファインズ, CFAは、「11の管轄区域にまたがる彼らの活動は、地域の多様性や共通する構造的ニーズの双方を、提言へ反映させるのに有益でした」と述べています。
「最終的にこの報告書は、政策を策定する人々と資本を配分する人々の間で、対話と調整を促すことを目指しています」と、CFA協会のEMEAアドボカシー部門資本市場政策研究スペシャリストであるフィービー・チャンとともに、この新しい研究の共同編集者であるファインズは付け加えました。
グローバルな投資家にとっての重要なポイント
・アフリカは若く、急成長を遂げていますが、資本が不足しています。:この地域における資本市場の発展と統合は必要不可欠です。
・中小企業は経済の基盤であるにもかかわらず、効率的な資本へのアクセスが困難です。:私たちは、こうした課題は解決可能だと考えています。
・プライベート・マーケットは、主に知的財産とテクノロジーに基づいた新しい経済に必要とされる、柔軟な資本構造を提供する可能性があります。
・政策による改革とパートナーシップはすでに進行中です。:信頼と予測可能性を構築するために、政府と規制当局、投資業界の連携が不可欠です。
・短期的な解決策ではなく、長期的な能力構築を支援すべきです。:長期的な開発を推進するスキルやデータ、インフラに資本を投入すべきです。
アフリカは止まらない。投資家も同じだ。
アフリカは世界で最も急速に成長している地域の一つであり、現地での前向きな姿勢は真実であると、ファインズは報告しています。「しかし、投資戦略は地域の現実、つまり法体系やデータ環境、人的能力にもとづいていなければなりません。だからこそ私たちの調査は、実用的な洞察に重点を置いているのです」。
ファインズは、アフリカ開発銀行の会議における前向きな姿勢に感銘を受けました。「多くの場面で、喫緊の課題についての議論から能力構築の概念へと人々が移行しているように、私には見えました。今、こうした開発の次の段階に進むことはできるでしょうか?人的資本の開発に重点を置くことは可能でしょうか?アフリカは世界で最も急速に成長する地域の一つとなる可能性が高いです。私たちはこの地域へ自信を持って投資するのに必要なデータを市場に提供するための調査とデータ収集に注力できるでしょうか?」
なぜプライベート・キャピタルなのか?なぜ今なのか?
アフリカの人口動態と経済状況が魅力なのです。この地域は世界で最も若く、最も急速に都市化が進んでおり、消費者の需要と起業家精神が高まっています。しかし、伝統的なパブリック・マーケットの資金調達、さらには援助型のモデルでさえ、この地域の資本ニーズを満たすには不十分だと、ファインズは説明します。「どのように資金調達を行い、どのように起業家を支援するかということについては、まさに私たちが資本市場を通じて解決し、プライベート・マーケットや官民パートナーシップの概念を通じて革新的なソリューションを提供したいと考えていることです」。
この報告書は、プライベートエクイティやベンチャーキャピタル、プライベートクレジットを含むプライベート・マーケットが資本形成の重要な原動力であると、重点的に主張しています。「これらは、特に雇用創出と地域の経済成長を促進する中小企業にとって、柔軟性や革新性、そして資金の迅速な供給をもたらします」と、ファインズは主張します。しかし、こうした民間チャネルが成功するために、予測可能な法的枠組みや透明性の高いコーポレート・ガバナンス、強固な金融インフラ、経験を積んだ現地の人材が投資家にとって必要だと、彼は付け加えました。
障壁か、それとも隠れたチャンスか?
報告書とアフリカ開発銀行の議論の双方において、資本市場の発展に対する主な障害が指摘されました。「グローバルな投資家にとって、これらは単なる危険信号ではなく、賢明な政策行動と協調的な投資によって、長期的な価値を引き出すことができる領域を示す指標なのです」とファインズは助言します。
この障害とは、次のようなものです。
・人的資本のギャップ:アフリカの若年人口は大きな可能性を秘めていますが、この地域には投資の基礎を学んだ金融専門家や市場専門家、起業家がさらに必要です。
・データと情報の非対称性:投資家にとって、国や業界を越えた、信頼性が高く比較可能な金融データにアクセスすることが困難です。
・規制の不確実性:一貫性がない、あるいは不透明な規則は、特にプライベート・アセットへの国内投資と外国投資の双方を阻んでしまいます。
・官民連携の弱さ:新しい政策は民間部門からの支持を得られないことが多く、その有効性が低下します。
・中小企業向けファイナンスへの限定的なアクセス: 銀行は、リスクの制約やカスタマイズされたファイナンス・ツールの欠如により、急成長している企業に十分なサービスを提供できないことが多いです。
主要な政策提言
報告書は、活発なプライベート・キャピタル市場は適切に機能するエコシステムによってもたらされると、強調しています。報告書では、投資家からの信頼を高めるためのより明確で一貫性のある国境を越えた規制や、透明性と説明責任を改善するためのより強力なコーポレート・ガバナンス、現地での金融専門知識を構築するための教育と訓練へのより広範なアクセス等を含む、一貫性のある改革パッケージが提唱されています。また、投資を戦略的な分野やインフラに導くためのより効果的な官民連携の必要性や、信頼を育みより幅広い市場参加を促そうとする、個人投資家や機関投資家を教育するためのさらなる努力についても強調しています。
「これらの改革を導入することでアフリカ諸国は、プライベート・キャピタルがより自由に流れ、経済発展と投資家からの信頼が共に育まれる環境を作り出すことができるのです」と、ファインズは語りました。
アフリカ開発銀行での会議:戦略的な出発点
この報告書が発表されたアビジャンでのアフリカ開発銀行の年次総会は、プライベート・キャピタルを活用する機運が、アフリカ大陸全土において高まっていることを浮き彫りにする出来事となりました。「今年のアフリカ開発銀行の主要テーマは、『アフリカの資本をアフリカのために、より有効に活用する』というものでした」とファインズは指摘します。このメッセージは、地域の政策の方向性を伝え、公共部門と民間部門の連携を強化するという、報告書の目的と密接に一致しています。
タイミングも非常に重要でした。アフリカ開発銀行のリーダー交代と長期的な開発金融への関心の高まりを受けて、この会議はマーケット・ベースの解決策を推進するための戦略的なプラットフォームを提供したのです。
グローバルな投資家にとって、シグナルは明確です。今や、アフリカの時代が来たのです。唯一の問題は、あなたがその構築に加わるかどうかです。
さらに詳しく知るには、AfDB Meetings Hubで、レポートの全文や「アフリカの資本形成: プライベート・マーケットの事例」、ビデオ、著者のブログ、関連調査等をご覧ください。
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執筆者
Mark Fortune
(翻訳者:安部 智宏, CFA)
英文オリジナル記事はこちら
Private Markets, Public Promise: Africa’s Investment Inflection Point - CFA Institute Enterprising Investor
注) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。
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