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CFA協会ブログ

         

No.743


                                                                                                                                           2025年12月26日

成功する投資家は何を読んでいるのか:プロの推薦書籍
(What Successful Investors Read: Book Recommendations from Professionals)

 

By チャド・ロング、PhD 

 

投資の専門家が、自宅からZoomでインタビューを受けているのを見ると、私はいつも背景の棚に並んでいる本が気になってしまいます。動画を止めて、そこに並ぶ本のタイトルを読み取ろうとすることもあります。もしかしたら、彼らが手にした本を読むことで、私も(あなたも)少しは彼らの考え方に近づけるかもしれないと思うからです。

 

最近、著名な投資家たちと話す機会に恵まれた私は、次のようなシンプルな質問を投げかけてみました。「より良い投資家になるために読むべき本は何でしょうか」。返ってきたのは、広範囲にわたる実践的な書籍でした。ここからは、それらの推薦書籍を整理して紹介します。

 

基本から始める:数字と明快な思考力

 

Abrams Capitalの創業者デイビッド・エイブラムスは、ジョン・アレン・パウロスの短い著作『数で考えるアタマになる!――数字オンチの治しかた(原題:Innumeracy)』を薦め、「多くの人は、数字の仕組みを理解していない」と言います。エイブラムスにとって、投資における「最初の一歩」はもっと数字に親しむことです。それができなければ、「金融の世界で大きく成長することは難しい」と言います。「天才的な数学者」である必要はありませんが、「数字とは何か、数学がどのように機能するのか」の理解は欠かせません。その基礎があれば、「金融の話は腹落ちしやすくなる」と付け加えました。

 

エイブラムスはさらに、マシュー・サイドの『失敗の科学(原題:Black Box Thinking)』も薦めています。このタイトルは、航空機のブラックボックス(飛行記録装置)に由来しています。

医療など多くの業界では失敗が隠されがちな一方、航空業界での事故や失敗は記録・分析されると指摘し、自己啓発に関心がある人は検討すべき非常に有益な考え方だと彼は言います。本書ではまた、明白なデータだけではなく、表に現れていないデータに目を向けることの重要性についても論じています。

 

人間行動についての考察

 

Efficient Frontier Advisorsの共同創業者であるウィリアム・バーンスタインは、2冊の本を薦めています。1冊目は、ジョセフ・ヘンリックの『文化がヒトを進化させた――人類の繁栄と〈文化遺伝子革命〉(原題:The Secret of Our Success)』です。「この本は、人間がどのように行動し、脳がどのように働き、そして社会がどのように機能しているか、すなわち人間そのものに関する本です」

 

もう1冊は、フィリップ・テトロックの『専門家の政治予測――どれだけ当たるか? どうしたら当てられるか?(原題:Expert Political Judgement)』です。本書は、優れた予測者とそうでない予測者の違いを検証しています。「実のところ、優れた予測者はほとんどいない」とバーンスタインは言います。

 

「賢人」本人から学ぶ知恵

 

エイブラムスとAcquirers Fundsの創業者トビアス・カーライルは、ウォーレン・バフェットの『Letters to the Shareholders of Berkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイの株主宛の手紙)』を読むことを薦めています。これらはインターネット上で無料公開されており、読むだけでまるでMBAを取るよりも実践的だとカーライルは言います。

 

MBAで教わる内容の多くは正直あまり意味がないと思います。私自身、経営学を学びましたが、間違った方向に導かれるようなこともずいぶん教えられましたね。でも幸運だったのは、17歳頃にバフェットの手紙を読んでいたことです」と彼は冗談めかします。

 

Vela Investment Management創業者のリック・ディロンもバフェットの手紙を勧めていますが、こちらは編集版を推奨しています。投資に本気で関心がある人にとって最高の本は『バフェットからの手紙――世界一の投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社(原題:The Essays of Warren Buffett: Lessons for Corporate America)』だと言います。著者のローレンス・カニンガムは数十年にわたるバフェットの手紙を整理し、健全な投資と強固な企業統治のためのロードマップとしてまとめ上げています。

 

「貴重な本ですよ」とディロンは言いつつ、自身は通読したにもかかわらず「必ずしも最初から最後まで読む必要はない」と語りました。また、あるときは、バーンズ&ノーブルの書店で全冊購入し、取締役や幹部に配ったこともある、とのこと。「金融分野全般においても、投資分野に限っても、これまで読んだ中で間違いなく最高の本です」

 

複雑かつ流動的な市場環境への適応

 

Polaris Capital managementの創業者バーナード・ホーンは、アンドリュー・ローの著書『Adaptive Markets 適応的市場仮説――危機の時代の金融常識(原題:Adaptive Markets)』を薦めています。 投資は航海に似て、風向きは常に変わるものだと彼は語ります。「投資環境は絶えず変化し、時間とともにより複雑になっていくものです。私たちは、変化のスピードが非常に速い時代に生きているのです」。ホーンはまた、テクノロジーや科学の進歩が極めて速いことも指摘します。

 

「キャリアを通じて学び続けなければ、いずれ誰かに追い抜かれてしまうかもしれません。これは競争なのです。だからこそ、常に自分が進化し続ける必要があります」

 

認知行動、規律、そして戦略について

 

Ritholtz Wealth Managementの創業者バリー・リソルツは、お勧めの投資の本を尋ねられたとき、真っ先にダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー――あなたの意思はどのように決まるか?(原題:Thinking, Fast and Slow)』を薦めると言います。「自分の脳そのものが問題の一部だということに気づきます。原因は中央銀行でも、市場を裏で操る存在でもなく、自分の脳なのです。私たちは投資のためではなく、サバンナで生き延びるために進化してきたのです」

 

リソルツが次に薦めるのは、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム(原題:Winning the Loser’s Game)』で、本の中で投資をテニスになぞらえています。テニスをする人の99.9%はアマチュアで、プロはごく一部にすぎないと彼は言います。「そしてプロは、サービスエースを取り、強打し、ライン際を狙い、美しいドロップショットを成功させるといった、決まった方法で勝つのです」

 

これは、アマチュアのプレーとは対照的だと彼は指摘します。「アマチュアは、ダブルフォルトをし、ネットにボールを引っかけ、格好つけたショットを狙って失敗します。アマチュア試合の多くは、ポイントを取って勝つのではなく、凡ミスによって負けているのです」

 

自分の実力の範囲でプレーし、ボールをちゃんと返して、ミスを避けることに集中すれば、テニスで十分良い成績が得られます。そして投資では、なおさらです。問題が生じるのは、投資家が勝てる銘柄や優秀なファンドマネジャーを一貫して選べると信じ込んでしまうときです。ほとんどの人には、それはできません。

 

投資家が知っておくべき教訓話

 

thinkorswimtastytradeの創業者トム・ソズノフは、ロジャー・ローウェンスタインの『天才たちの誤算――【ドキュメント】LTCM破綻(原題:When Genius Failed)』がとても面白いと挙げています。「この本は、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)と、ブラックショールズモデルを構築したノーベル受賞者たちが市場を崩壊寸前に追い込む様を描いています」

 

彼はまた、フレッド・シュエッドの『投資家のヨットはどこにある?――プロにだまされないための知恵(原題:Where Are the Customers’ Yachts?)』も推薦しています。これは、バッテリー・パークの地区にあった、ハドソン川を望む旧メリルリンチ本社を舞台にした話です。あるメリルリンチの社員が、一人の来訪者に、あれはすべてウォール街で働く証券会社の人々が所有しているヨットだと説明しています。すると、訪問者はヨットを見渡しながら「では、顧客のヨットはどこにありますか」と尋ねます。社員は「ええ……この辺りにはひとつもありません」と答えるのです。

 

この逸話は、どれだけ知性やモデル、名声があっても、現実から投資家を守ってくれるわけではないことを思い出させてくれます。まさに古典的なウォール街の本です。

 

好奇心と謙虚さを持ち、機動的であり続けよう

 

まとめると、アドバイスはシンプルです。より優れた投資家になるためには、判断力を磨き、知的好奇心と謙虚さをもち、そして歴史から学ぼうとする姿勢が必要なのです。

 

 

 

(翻訳者: 智孝)

 

 

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) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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