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CFA協会ブログ

         

No.771


                                                                                                                                           2026年7月2日

ブックレビュー:株式市場のマエストロたち

世界最高の投資家たちの成功をもたらす習慣・戦略・思考法

Book Review: Stock Market Maestros:

The Winning Habits, Strategies, and Mindsets of the World’s Best Investors

マーティン・フリードソン、CFA

 

株式市場のマエストロたち:世界最高の投資家たちの成功をもたらす習慣・戦略・思考法 リー・フリーマン=ショア、クレア・フリン・レヴィ著(ハリマンハウス2026年)

 

「世界最高の投資家」の戦略を再現できれば、理論上は投資で成功するための方程式になるのではないでしょうか。そうした前提に立ち、世界トップクラスの投資マネージャーたちへのインタビューを主な内容とする本書「株式市場のマエストロたち」から読者が拾い集めることのできるアドバイスを、ページ番号の参照をつけてご紹介いたしましょう。

 

・セルサイド・リサーチに頼るべきではない。また、セルサイドのアイデア・ランチにも参加すべきではない。(129138ページ)

・セルサイド・アナリストのアイデア・ミーティングで有望なアイディアを探すべきである。(226ページ)

・テクニカル分析は使うべきではない。(4588111ページ)

・大幅な株価下落に出来高の急増が伴う場合は、売却すべきタイミングを示すシグナルかもしれないということを念頭に置くべきである。(40ページ)また、テクニカル分析は小型株では有効に機能することにも留意したい。(25ページ)

・チャートや50日移動平均線、200日移動平均線を用いるべきではない。(147235ページ)

・チャートは多くの人々の行動に影響を与えているため、注視しておくべきである。(155ページ)

・株価が急騰しても売却すべきではない。(77ページ)

・株価が200日移動平均線を100%上回った場合には、ポジションの一部を売却すべきだ。(36ページ)

・ストップロスを用いるべきではない。(77100111242ページ)

・空売りでは「ソフト・ストップロス」を用いるべきだ。(143ページ)

・成長のためにボルトオン買収(小規模な追加買収)を積極的に行う企業は有利と見るべきである。(167ページ)

・多数の企業買収によって帝国を築こうとする企業は買うべきではない。(78ページ)

・勝ち銘柄は15か月を超えて保有すべきではない。(25ページ)

・平均保有期間は8年程度が適切である。(46ページ)また、14年間保有し続けても問題がない場合もある。(51ページ)

 

本書のアドバイスの中に互いに矛盾しているように思えるものがあるとしても、気にする必要はありません。著者のリー・フリーマン=ショアとクレア・フリン・レヴィは次のように述べています。「マエストロたちは、それぞれが異なる投資スタイル、地域的な専門性、そして個性を持ち寄っています。しかし、彼らを分け隔てているものよりも、共通しているもののほうが、私たちに多くの学びを与えてくれるのです。」彼らが挙げる共通したコンセプトの筆頭は、「アイディアよりも実行力が勝る」という考え方です。

 

これらのトップクラスの投資家の成功は、どの銘柄を選んだかよりも、購入した後にその銘柄をどのように扱ったかに大きく依存していました。全体として見ると、利益につながった投資アイディアはわずか49%に過ぎず、どのマエストロも勝率57%を超えることはありませんでした。卓越した投資家の優れたパフォーマンスは、うまくいったアイディアから得た利益が、失敗したアイディアから被った損失を大きく上回ったことの結果なのです。投資家へのインタビューでは、勝ち銘柄と負け銘柄の両方をどのように扱うのかについて詳しく語られており、特に初期のポジションサイズ、ポジションの買増しと調整のための基準、そしてポジションを手仕舞うタイミングの判断理由に重点が置かれています。

 

銘柄選択は、一般に考えられているほど重要ではないとはいえ、本書の議論の中で軽視されてはいません。繰り返し登場するテーマのひとつは、長期的に見て好ましいビジネスモデルと経営品質に基づいて企業を選択することです。創業者が経営する企業に強い魅力を感じると語る投資マネージャーもいます。また、ある投資家は、「市場は2年を超える時間軸で企業価値を評価できるほど効率的ではない」と述べて、正真正銘の割安銘柄を注意深く探している読者を励ましています。

 

フリーマン=ショアとレヴィによるインタビューの対象者たちは、苦労して構築した投資仮説が崩れない限り、一時的に株価が下落してもほとんどの場合は保有を続けます。中には、「株価が急落するたびに型にはまったように売却をしていたなら、自分の最大の利益を生んだ投資のいくつかを逃していただろう」と語る投資家もいます。

 

本書には健全な投資原則が盛り込まれていますが、慎重な投資プロフェッショナルであれば、著者たちが本書で取り上げた12人の投資家を「世界最高」であるとして評価する基準は何なのかと尋ねることでしょう。それは、例えば1988年から2018年まで平均して年率66.1%の総リターン(手数料控除後では39.1%)という運用成績を残した故ジム・シモンズを、疑いもなく殿堂入りとして評価するような種類の評価基準ではないことは分かります。ふたりの著者は、何千何万にも及ぶ上場株式投資信託の中から傑出した投資家を選び出すために用いたより複雑なプロセスを、8ページを割いて説明しています。

 

著者たちは最初に、モーニングスターやリッパーなどの団体による表彰の対象となり、3年間の高いシャープレシオ、ソルティノレシオ、アップサイド/ダウンサイド・キャプチャーレシオを達成したファンドを選定しました。さらに、著者のレヴィが創業・経営するエッセンシア・アナリティクスのデータベースに登録されているファンドであることを条件として加え、最終候補リストでは73本のファンドに絞り込みました。そして、銘柄選択、ポジションサイズの決定、売却タイミングといった行動の意思決定スキルの測定のためのエッセンシアの方法論に基づいて、12人の投資マネージャーが選ばれし者となったのです。

 

リスクについて触れることなく投資の卓越性の分析を終えることはできません。フリーマン=ショアとレヴィは、「マエストロたちにとってリスクとはボラティリティではなく、自分たちが間違っている確率によって定義される。」と述べています。しかし、ボラティリティは、著者たちがトップクラスの投資家を選定する際に用いた2つのリスク調整後パフォーマンス指標のいずれにおいても分母となっています。これらのエキスパート・マネージャーのひとりは、適切な評価基準はソルティノレシオであると主張しています。シャープレシオとは異なり、ソルティノレシオは下方変動率(ダウンサイド・ボラティリティ)のみをリスクとして考慮しています。

 

このコメントを受けて私は、これら2つの指標のどちらを採用するかによって違いが生じるという前提を検証してみようと思いました。分析結果はこの命題に対して肯定的なものとなりました。30本のグロース株式ファンドをサンプルとして集めたところ、シャープレシオで第1位のファンドは、ソルティノレシオによる順位では第3位となることが分かりました。しかしながら、下位の3分の1にランクされるファンドについては、一方から他方のレシオにスイッチしても変化はありませんでした。これは、20位から30位のファンドではリスク調整後リターンがより大きくばらついていたのに対し、上位のファンドでは狭い範囲に集中していたという事実と関係していたのです。

 

本書の読者は、財務諸表や決算説明会以外で見つかる企業の見通しに関する適切な情報源についての有用なヒントを得ることができます。また、本書で取り上げた投資家たちが、投資を避けるべき銘柄、あるいは彼らの投資仮説がもはや成り立っていないと結論付けるべき銘柄を見極める際のレッドフラッグ(警戒すべき兆候)も大変価値があります。さらに、利益をもたらした投資と損失を生んだ投資の両方を含む41のケーススタディは、投資プロフェッショナルを実行面で支援するでしょう。著者たちは、この実行力こそが正しい銘柄を選択すること以上に重要であることを示しています。これらのストーリーは、米国、中国、欧州、およびグローバルポートフォリオに関連しています。

 

おそらく、本書から得られる最大の価値は、大成功をおさめた投資家たちに共通する本質的な特性を学べることにあります。彼らは並外れた勤勉さ、規律、そして自らのスキルを継続的に向上させようとする献身的な姿勢を示しているのです。結局のところ、こうした特徴を取り入れることこそが、本書で論じられている個別の投資戦略のどれよりも大きな力を発揮する可能性が高いのです。実際のところ、本書に描かれた専門家のひとりは、「他の投資家のアプローチを再現しようとすることの危険性」についてさえ語っているのです。

 

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執筆者

Martin Fridson, CFA

(翻訳者:荒木 謙一、CFA

 

英文オリジナル記事はこちら

https://rpc.cfainstitute.org/blogs/enterprising-investor/2026/stock-market-maestros

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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