アーノルド・マダンハ, CFA
プライベート・エクイティ(PE)の出口戦略は、円滑なIPO(新規株式公開)の実現や迅速なM&Aを用いたターンアラウンドの時代を経て、コンティニュエーション・ファンド(継続ファンド)を含む形に適合し、進化してきました。かつては低い資金調達コストにより、記録的な取引件数、資金の高速回転、安定したエグジットの機会が促進されてきましたが、このような状況は過去5年間で消滅しました。今日の高金利環境下では、エグジットの選択肢は狭まり、資金調達コストは上昇し、保有期間は長期化しています。マッキンゼーの調査によると、昨年のバイアウト・ファンドの平均保有期間は、過去20年間の平均値5.7年から6.7年に上昇し、エグジット待ちの案件数は2005年以降で最大の水準になっています。
ここで登場するのがコンティニュエーション・ファンドです。かつてはニッチな存在でしたが、急速に主流になっています。多くの投資家に機会を提供する一方で、慎重な対応を促す見方もあります。コンティニュエーション・ファンドの台頭は、一時的なトレンドではなく、PE市場の構造的な進化を示しています。比較的最近PEのエコシステムに加わったこれらのファンドは、資金制約が強まる環境でも流動性を確保できる一方で、透明性とガバナンスの境界線に挑む側面が試されています。
コンティニュエーション・ファンドの理解
コンティニュエーション・ファンドを用いることで、PEファームが、既存の満期が近づいたファンドから一つまたは複数のポートフォリオ資産を新しいファンドに移し替えることができます。そして、その新しいファンドは、多くは同じゼネラル・パートナー(GP)が運用しています。既存のリミテッド・パートナー(LP)は、現金化するか、または新しいファンドにそのまま持ち越すかのいずれかを選択できます。一方、新たな投資家は、より短い保有期間で、既に成熟した優良資産の持ち分を取得することができます。
コンティニュエーション・ファンドの市場は急速に拡大しています。2024年には、この仕組みを用いたファンドが96件記録されました。これは前年比12.9%の増加であり、同時期のPEによる全てのエグジット件数の14%に相当します。30億ドル規模のアルテラ・マウンテン・カンパニーの取引のような単一資産型のコンティニュエーション・ファンドが登場したことは、市場規模の拡大を象徴しています。グリーンヒル・アンド・カンパニーのアナリストは、成熟しつつあるセカンダリー市場と、エグジットが困難な環境を受けて、コンティニュエーション・ファンドは今後数年間でPEのエグジットの20%を占める可能性があると予測しています。
なぜ増加したのか?
これら全ての要因が、戦略的なM&Aを減速させています。2023年、世界のM&A件数は過去10年間で最低水準を記録し、パンデミック後の取引成立ペースの減速が鮮明になりました。世界のPEのエグジット件数は、2021年のピーク時の4,383件から3,796件へと減少しました。ピーク時よりは減少したものの、2025年半ばの時点で世界のPEのドライパウダー(未投資資金)は依然として約2.5兆ドルに上り、エグジットの選択肢が細る中でも、引き続き強い投資意欲がみられます。最近、コンティニュエーション・ファンドが急増している理由をいくつか挙げることができます。主なものとして、従来型のエグジット手段の不足、ファンドのマチュリティ・ウォール(満期の壁)、そしてLPが流動性を確保する必要性の高まりが挙げられます。
まず、資金調達コストの上昇が、レバレッジド・バイアウトを抑制し、M&A取引における売り手と買い手の価格ギャップを拡大させています。コンティニュエーション・ファンドは、運用者が確度の高い優良資産を引き続き保持しつつ、投資家に流動性オプションを提供することができる仕組みです。また、マチュリティ・ウォールの接近も大きな要因です。PEファンドの50%超が現在6年目以上であり、2025年または2026年に1,607本のファンドが償還期限を迎える予定です。コンティニュエーション・ファンドは、PEファームが強制的な売却を行うことなく価値創造を継続できる手段なのです。
最後に、コンティニュエーション・ファンドは、投資家の柔軟性ニーズに対応しています。LPは、即時の流動性を得るために退出することも、将来のアップサイドを狙って持ち越すこともできます。新規投資家は、(投資対象が見えないまま資金をコミットする)ブラインド・プール特有のリスクを抑えつつ、実績のある資産に投資することができます。コンティニュエーション・ファンドの損失率は9%と、バイアウト・ファンドの19%と比較すると低く、リスク調整後リターンの面でも優位性を示しています。
メリット:三方良し(Win-Win-Win)の仕組みか?
(この仕組みの)支持者は、コンティニュエーション・ファンドが関与する全ての当事者、すなわちGP、既存のLP、そして新規の投資家に利益をもたらすと主張します。GPにとっては、優良資産への運用を継続できるため、継続的な運用報酬と成功報酬を引き続き得ることができます。
LPは、将来のアップサイドの可能性を犠牲にすることなく流動性を確保できます。一方、新規の投資家は、リターンへの見通しがより明確な、成熟した資産にアクセスできます。最近の分析によると、コンティニュエーション・ファンドは、投下資本倍率(MOIC、Multiple-on-Invested-Capital)を見る限り、全てのパフォーマンス区分でもバイアウト・ファンドをアウトパフォームしており、損失率も低水準であることが確認されています。
実証データも、コンティニュエーション・ファンドの魅力を裏付けています。モルガン・スタンレーの分析によると、上位四分位に属するコンティニュエーション・ファンドのMOICは1.8倍に達しており、同等のバイアウト・ファンドの1.6倍を上回っていました。また、ライム・ロック・パートナーズがエネルギー資産に対してコンティニュエーション・ファンドを活用した事例のように、セクター特有の事例も見られます。これらは、ファンド運用者が市場サイクルをまたいで価値を創造し続けることができる典型例です。PEファームは、投資家から不人気な事業領域にある資産の保有を継続するためにコンティニュエーション・ファンドを活用して、将来の市場変化に賭けるという戦略を採ってきました。こうした柔軟性があることで、タイミングが必ずしも最適でない市場環境でも、「良い投資」を「素晴らしい投資」に引き上げることができます。
リスクおよびガバナンス上の課題
多くのメリットがある一方で、コンティニュエーション・ファンドには、ガバナンスとバリュエーションに関する懸念が指摘されています。GPが売り手と買い手の双方を兼ねる場合、本質的に利益相反が生じます。投資家の中には、こうした取引の性質に疑問を呈する者もおり、適切なガバナンスが働かなければ、循環取引的な資金調達構造に見えかねないという批判をしています。この構造的な問題についてより深く理解したい場合は、CFA協会リサーチ&ポリシー・センターのレポート「Continuation Funds: Ethics in Private Markets」(コンティニュエーション・ファンド:プライベート市場における倫理)を読むことをお奨めします。
また、バリュエーションの透明性も不可欠です。LPは、移管された資産の購入価格が適正な市場価値を反映していると確信できなければなりません。多くのPEファームは、この問題に対処するために、第三者のフィナンシャル・アドバイザーによる公平なフェアネス・オピニオンを取得したり、オークション形式を採用して市場原理に基づく価格形成を追求したりします。しかし、LPは往々にしてこれらの取引を十分に精査するリソースがありません。また、(分散化されたセカンダリー・ファンドと比較して)単一資産ファンドが持つ集中リスクにより、LPが継続投資をためらう可能性があります。
このような懸念に拍車をかけているのが、2024年の米国第5巡回控訴裁判所の判決です。この判決により、米証券取引委員会のプライベート・ファンド・アドバイザー規則の一部が無効となり、コンティニュエーション・ファンドに関するフェアネス・オピニオンと開示義務は撤廃されました。この判決の結果、報告義務要件が軽減されます。GPに対する規制や監督が弱まるだけでなく、GPは取引の実行スピードを早めることができるので、利益相反リスクが高まる可能性があります。また、この変更により、投資家側に徹底したデュー・デリジェンスを実施する責任が重くのしかかり、自主的で強固なガバナンス体制の整備が一段と重要になるのです。
投資家にとってのベストプラクティス
コンティニュエーション・ファンドを利用する人々にとって、リスクを軽減し、成果を高めるために有効なベストプラクティスを挙げます。
1. 独立したバリュエーションを確保する
フーリアン・ローキーやエバーコアといった信頼できる第三者のアドバイザーによる評価を要求し、資産価格が適正であるかを検証します。可能であればオークションの実施を追求します。LPは、詳細な価格設定方法や比較可能な取引データの提供を求めるべきです。
2. GPとLPのインセンティブを整合させる
長期的な利害を投資家と一致させるために、GPに保有するすべての投資分の継続保有を求めるとともに、成功報酬や運用報酬の報酬設計を交渉します。
3. 集中リスクを評価する
単一資産型のコンティニュエーション・ファンドは、リスクの集中度が高まる可能性があります。投資家は、分散型のセカンダリー・ファンドとのリスク・リターン特性を比較するとともに、市場環境の悪化を想定したストレステストを実施すべきです。
4. 早期にガバナンス面の交渉をする
LPは、最初のファンド組成時にコンティニュエーション・ファンドの条件を交渉し、価格設定、ガバナンス、およびLPの選択肢について期待値を明確に設定しておくべきです。将来のコンティニュエーション・ファンドとの取引に対して影響力を確保するために、最初のファンド組成時にLPの拒否権や諮問委員会の権限を設けておくことが重要です。
5. 専門家の知見を活用する
セカンダリー取引およびGP主導の取引に経験豊富なアドバイザーを起用し、バリュエーション手法、キャッシュフロー・モデル、および規制面での影響を総合的に評価してもらうことが重要です。
6. 取引後のパフォーマンスを継続的にモニタリングする
保有期間を延長することで付加価値が発生することを確認するため、運用上および財務上の指標に関する透明性の高い定期的な報告を要求します。
7. 積極的に関与する
GPとのオープンなコミュニケーションを図り、利益相反や透明性に関する懸念に対処します。LP諮問委員会に参加し、ガバナンスに影響力を持ち、説明責任を確保します。積極的な関与により、(GPの)自己取引を抑止し、公正な結果を促進することができます。
新たなPEのニューノーマル
投資家にとって、この環境で成功できるかどうかは、ファンドの仕組みの新しさそのものよりも、どれだけ厳格に監視を利かせられるかにかかっています。ゼロ金利下での拡大期と、現在の高金利調整期の両方から得られる教訓は明確です。プライベート市場では、利害の一致、透明性、そして規律が確保されて初めて、価値創造が続くのです。
(翻訳者:河野俊明、CFA、CAIA、CPA)
和文オリジナル記事はこちら
https://blogs.cfainstitute.org/blog/2025/10/29/private-equitys-new-exit-playbook/
注) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資勧誘を意図するものではありません。
また、CFA協会または執筆者の利用者の見方を反映しているわけではありません。